novelber 10.私は信号 なんとかベッドから出ることなくアラームを止めようと手を伸ばすが、届かない。止めるのを諦めようにも、無理矢理叩き起こされた頭に甲高い音はつらい。結果、這うようにベッドを出て、そのまま目覚まし時計をわし掴みする。 ようやく静寂を取り戻したので... 2020.07.10 novelber小説
novelber 09.ポツンと きっかけははっきりと覚えている。 期末試験初日を乗り切り、翌日に備えるため、友人とのお喋りも寄り道もせず、塾に向かっていたときだった。 学校から塾に直接行くには、五階分の抜きぬけになっている、円形の吹き抜け広場(そのまんまのネーミングだ... 2020.07.09 novelber小説
novelber 08.天狼星 それはもうこっぴどく怒られた。 割と温厚な歳の離れたあの従兄弟が、あんなに怒ったのを見たのは初めてだ。両親にだってあんなに怒られたことはない。 ただ、それだけのことをしてしまったのだと、わかっていた。もちろん、反省もした。死ぬほどした。... 2020.07.08 novelber小説
novelber 07.朗読 ほとんどの子供が、〈青滝〉の外――地上に出るのが初めてだった。 地球は塵に覆われていて、灰色の空が広がっている。それは、小さな子供でもいつの間にか常識として知っている。 だが、知っているだけでは、実感はわかない。 ただでさえ泣きながら... 2020.07.07 novelber小説
novelber 06.当日券 有休を取って気分転換でもしたらどうか、と言われた。疲れているとは思わないし、自分ではいつも通りに、程良い緊張感を持って勤務しているつもりだが、同僚や上司によると、そうでもないらしい。 残業になることはあるが、過密に働いているわけではない。... 2020.07.06 novelber小説