短編 忘れ得ぬもの、まだ見ぬ世界 その感触を、生涯忘れることはないだろう。けれど――。 「火星行きが目前で、ナーバスになってるだけじゃない?」 少し呆れた顔の同僚達に見送られ、地球行きの船に乗る。きっと仲間の言う通りだ。月生まれなのに、地球の青さに懐かしさを感じるの... 2023.02.12 短編
300字SS 見えざる手 朝日が眩しい海岸を歩いていた時に、出会った。足がなくなった大きなクラゲが打ち上げられていると思ったが、違った。 迷子の宇宙人だった。 故郷へ帰るロケット作りを手伝う羽目になったのだが、色々な研究機関やマスコミ、動画配信者等に追いかけ... 2022.06.05 300字SS小説
300字SS あかときの8分19秒 昼に白く輝き、夜は月を通して存在を知らしめる、人類最寄りの恒星。 目を細めても眩しすぎるその輝きは、8分19秒前のもの。今見えている太陽は、既に過去なのだ。 見えていても、それだけかの星は遠い。 有志が集まって打ち上げた太陽探査... 2021.07.04 300字SS小説
300字SS 種撒く人 「私の記憶に間違いなければ蒼藤の月一日。晴れ後雷雨。気持ちよく寝ていたら雷に起こされ、雨に見舞われる。昼寝を邪魔され不愉快だが、全身が洗えてすっきりできたので良しとする」 話しかけていた相手である黒く小さな種を、薄緑色の瓶に入れてしっか... 2021.05.01 300字SS小説
300字SS もし目が覚めたら、夢の話をしよう 「私達はもう長くないけど、あなたは違う。あなたは私達では辿り着けない、遠い遠い未来へ行ける。だから、そこで伝えて。あなたを目覚めさせた存在に、私達のことを。この世界で起きたことを。私達が夢見た未来を」 それが、この目で見た最後の光景でし... 2020.12.05 300字SS小説