SF

小説

空が晴れである限り

気持ちよく晴れた空の下に、それにふさわしくない音が響いていた。  死の宣告のように重苦しい音。それに比べるとかわいそうなほど小さく、必死な足音。  一人の少女が、岩と泥でできた人型の化け物に追われていた。化け物の大きさは、少女の優に三倍はあ...
300字SS

新しいものは古いものの中に

砂地に大小様々な石が転がっていた。たまに大きなものがあると思うと、それは遙か昔の人工物のなれの果て。周辺を掘れば、更なる人工物が見つかる。大概は瓦礫だが、たまに文字通り掘り出し物もある。  たとえば、蓋を溶接した金属の小箱とか。  ガナと二...
300字SS

I’m a human being.

ヒトは、どこまでをヒトと認めるのか。  肉体の衰えた部位を、機械体に置き換える人々がいる。中には脳以外の部分を、極端な場合は、脳でさえ。  悉く機械に置き換えたヒトは、果たしてアンドロイドとどれほど違うのか。火星にいくつもの都市を建設してい...
短編

忘れ得ぬもの、まだ見ぬ世界

その感触を、生涯忘れることはないだろう。けれど――。 「火星行きが目前で、ナーバスになってるだけじゃない?」  少し呆れた顔の同僚達に見送られ、地球行きの船に乗る。きっと仲間の言う通りだ。月生まれなのに、地球の青さに懐かしさを感じるのは、も...
300字SS

見えざる手

朝日が眩しい海岸を歩いていた時に、出会った。足がなくなった大きなクラゲが打ち上げられていると思ったが、違った。  迷子の宇宙人だった。  故郷へ帰るロケット作りを手伝う羽目になったのだが、色々な研究機関やマスコミ、動画配信者等に追いかけ回さ...