小説 天体観測 「折り入って頼みがあるんだ」 それまであぐらをかいて談笑していた武利(たけとし)が、急に正座をして、前髪がローテーブルに置かれたコップの縁にあたりそうなほど頭を下げた。 2019.06.08 小説天体観測
小説 いつかまた君と、ここで 見上げれば青い空。視線を下げると水平線が横に長く伸びている。海は空よりも青い。 さらに視線を下げると、海岸線が見えた。白い砂浜ではなく、洗濯板のような岩が広がっている。 「『鬼の洗濯板』と呼ばれてたらしいよ」 2019.06.08 小説天体観測
小説 かげろうが消えた夏 後編 「黒木!」 頭の中ではなく、間近で声が響いた。 右側には、目を真っ赤にして心配そうな顔をしている愛菜(あいな)がいて、左側にはやはり心配そうな顔の立花君がいた。 「恵里香(えりか)、大丈夫!? ごめんね、ごめんね!」 古びたリクライニ... 2019.06.08 小説天体観測
小説 かげろうが消えた夏 前編 「あの夏に何があったのか、分かった」 朝、大学へ行く準備をしていた時に立花(たちばな)君から届いた短いメッセージを見て、わたしは思わず声を上げた。 どうしたの、と怪訝な顔をする両親に、何でもないと応えて、必要な物を急いでバッグに詰めてい... 2019.06.08 小説天体観測
小説 地上を往く 後編 「東郷。スピードを上げろ」 「渡辺さん! 引き返すべきですよ」 「事故ったのかもしれない。それに襲撃を受けたとしても、地上を移動する者として見殺しにはできない」 地上が危険なのは、人体に有害な大気のせいだけではない。人間を襲う無人兵器の存... 2019.06.08 小説天体観測