300字SS いま大切なものは どうしても欲しいのならば、力を示せ。己の力を。 一度始めてしまったら引き返せない。相棒の竜と共に森や砂漠、山岳地帯をひたすら駆け抜け、指定された目的地に到達する。ただそれだけの競走。 優勝者には賞金と、望みを一つ叶えてもらえるという副賞があ... 2024.12.22 300字SS小説
掌は塵と消えて 掌は塵と消えて〈6〉 一弥は、義鷹のようになりたいと思っていたし、彼を目標として修行を続けてきた。 それは、自分の暗い願いが物の怪を引き寄せ、人を殺してしまった、その罪を少しでもあがなうためでもあり、人にあだなす物の怪を世に蔓延らせないためでもあった。 一人前と... 2024.08.04 掌は塵と消えて小説短編
掌は塵と消えて 掌は塵と消えて〈5〉 義鷹は、物の怪退治屋としては師匠であったが、それ以外の日常の面では、年の離れた兄のようだった。一弥に読み書きや算術の基本を教え、町での暮らし方、野宿の仕方等々、様々な知識や知恵を惜しみなく与えてくれた。「一弥。おまえもそろそろ刀を持って構わ... 2024.08.04 掌は塵と消えて短編小説
掌は塵と消えて 掌は塵と消えて〈4〉 物の怪は闇に潜み、闇に紛れ、闇から現れる。身分や老若男女など構わず、人を襲う。「奴らがいつどこに現れるのか、今もよく分かっていない。ただ、一度現れると、周辺に出没するようになる。一弥の村を襲う前にも、その近くの山道で襲われた旅人がいる」 あ... 2024.08.04 掌は塵と消えて小説短編
掌は塵と消えて 掌は塵と消えて〈3〉 だが、想像した痛みはなく、代わりに奇妙で短い悲鳴が目の前から聞こえた。 恐る恐る目を開けると、瞑る前よりも近いところにムカデの口があった。そしてその中を貫くように、緑色に光る細い柱――いや、刀があった。「おい、大丈夫か?」 顔を上げると、ム... 2024.08.04 掌は塵と消えて小説短編