小説

小説

森のほとりの怒れる人

〈マの森〉に一人で入るな、と大人達が口を酸っぱくして言っているのに、ポラはいつもお構いなしだ。今日は朝から姿を見かけないなと気付いた頃に、全身草まみれで現れる。 「キュラ、お土産だよ」  満面の笑みで、小さく綺麗な花束や、珍しい木の実を差し...
小説

お迎えさん/後編

有音が『お迎えさん』に選ばれたことは集落全体が知りながら、お祭りではないので、これといった盛り上がりはなかった。みなが有音に「よかったね」と嬉しそうに声をかけ、有音も「ありがとう」とやはり同じように返す光景を何度か目にしたくらいだ。有音と紗...
小説

お迎えさん/前編

屋根の半分以上は苔むし、部外者が見れば朽ちていると思うかもしれない。だが、部外者がこんな小さな社を訪れることは、まずないだろう。普段ですら、簡単な掃除をしに来る彼以外、滅多に人が来ない。  それでもこの小さな小さな社は、集落にとって大切なも...
300字SS

神さまごっこ

『世界創造プログラム』なるサービスをご存じだろうか。電脳空間に自分だけの世界を創造できるのだ。魔法があったり人間ではない種族を繁栄させたり、自由自在だ。  ドラゴンが舞い魔法もある。ならば魔王もいてほしい。魔王だから手下はたくさん。  基本...
300字SS

救世主の真実

大きな酒瓶やいくつもの小瓶が乱雑に転がり、薄暗い室内には妙に甘ったるい匂いが立ちこめていた。 「これが、お前の救世主の本当の姿さ」  目は虚ろで呂律は回らず、だらしなく涎を流している。 「私に力などない。元よりなかったんだ……」  祭り上げ...