小説 森のほとりの怒れる人 〈マの森〉に一人で入るな、と大人達が口を酸っぱくして言っているのに、ポラはいつもお構いなしだ。今日は朝から姿を見かけないなと気付いた頃に、全身草まみれで現れる。 「キュラ、お土産だよ」 満面の笑みで、小さく綺麗な花束や、珍しい木の実を差し... 2021.12.25 小説短編
小説 お迎えさん/後編 有音が『お迎えさん』に選ばれたことは集落全体が知りながら、お祭りではないので、これといった盛り上がりはなかった。みなが有音に「よかったね」と嬉しそうに声をかけ、有音も「ありがとう」とやはり同じように返す光景を何度か目にしたくらいだ。有音と紗... 2021.12.12 小説短編
小説 お迎えさん/前編 屋根の半分以上は苔むし、部外者が見れば朽ちていると思うかもしれない。だが、部外者がこんな小さな社を訪れることは、まずないだろう。普段ですら、簡単な掃除をしに来る彼以外、滅多に人が来ない。 それでもこの小さな小さな社は、集落にとって大切なも... 2021.12.12 小説短編
300字SS 神さまごっこ 『世界創造プログラム』なるサービスをご存じだろうか。電脳空間に自分だけの世界を創造できるのだ。魔法があったり人間ではない種族を繁栄させたり、自由自在だ。 ドラゴンが舞い魔法もある。ならば魔王もいてほしい。魔王だから手下はたくさん。 基本... 2021.12.05 300字SS小説
300字SS 救世主の真実 大きな酒瓶やいくつもの小瓶が乱雑に転がり、薄暗い室内には妙に甘ったるい匂いが立ちこめていた。 「これが、お前の救世主の本当の姿さ」 目は虚ろで呂律は回らず、だらしなく涎を流している。 「私に力などない。元よりなかったんだ……」 祭り上げ... 2021.11.07 300字SS小説