異世界ファンタジー

小説

春に溶ける

 今でも悔いていることがある。懐に忍ばせている小さな小さな角笛を手にする度、後悔が生まれ、心の中に降り積もる。溶けて消えはしない。  謝りたくとも謝れない、返したくとも返せない。角笛の持ち主は、一つの地に長く留まることはない人だから。 ...
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最強の魔法使いの服

 魔法使いが魔法を使うには、魔法が織り込まれた服が必要だ。使う魔法によって服は変わる。  だから師匠は、真夏でもたくさん重ね着をしている。快適に過ごせる魔法のかかった服も着ているから、暑くはないらしい。 「だが、重ね着すればいいものでもな...
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貝に託す

 あなたと同じ道を歩むことを選べなかった私の代わりに、この二枚貝の片割れを連れて行って下さい。  その片割れを、私も肌身離さず大事にします。  貝を耳に当てて、あなたの声を思い出します。あなたもきっとそうして下さい。  心はいつもあなたの...
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カササギの橋渡し

 見上げると数え切れない無数の星。明るさ様々に夜空を彩り、寄り集まってさながら川のようだ。なんと美しく流れる壮大な川だろう、と溜息がこぼれる。 「明日も晴れそうでございますね、姫様」  侍女の言葉に、露台で空を見上げていた姫は嬉しそうに笑...
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鍵なる娘は森の奥に

 森の奥深くに聳える巨木のうろには、娘が埋まっている。その娘が世界を辛うじて守っているのだ。  世界は緑に覆われていた。一晩目を離せば畑が緑に奪われるほどに。 だから、森のほとりに住む若者は成人の儀礼として、うろに眠る娘の目覚めを促すのだ...
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