300字SS 書き初め 年が改まって最初の市は、毎年大賑わいだ。 今年一年の幸せを求めて、呪まじない師の店にも多くの客が訪れる。呪い師がその年初めて書く護符は、特に効果があるとされるのだ。 ゆえに人気の呪い師の店先には、書き初めの護符をもらおうと前の晩から... 2023.01.21 300字SS小説
小説 森のほとりの怒れる人 〈マの森〉に一人で入るな、と大人達が口を酸っぱくして言っているのに、ポラはいつもお構いなしだ。今日は朝から姿を見かけないなと気付いた頃に、全身草まみれで現れる。 「キュラ、お土産だよ」 満面の笑みで、小さく綺麗な花束や、珍しい木の実を差... 2021.12.25 小説短編
300字SS 救世主の真実 大きな酒瓶やいくつもの小瓶が乱雑に転がり、薄暗い室内には妙に甘ったるい匂いが立ちこめていた。 「これが、お前の救世主の本当の姿さ」 目は虚ろで呂律は回らず、だらしなく涎を流している。 「私に力などない。元よりなかったんだ……」 祭り... 2021.11.07 300字SS小説
300字SS 宝島 人々の望むものがそこにはあるという。どんな宝でも願いでも、欲しいものは必ずある。 数多の人々がそこを目指して旅立ち、誰一人、帰らなかった。 それでも、なんとしても手に入れたいものがあれば、目指してしまうのだ。 うねる波を乗り越え、... 2021.10.03 300字SS小説
300字SS 封印ロンリネス 「ぼくを一人にしないで」 その願い虚しく、十年前、唯一の幼なじみは眠りについた。 小さな宮殿の奥には石造りの寝台と、その向こうに祭壇がある。手前の寝台で横たわる人物はさながら捧げられた生贄だ。 祭壇の中には〈災いの元〉がいるという... 2021.09.05 300字SS小説