異世界ファンタジー

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書き初め

 年が改まって最初の市は、毎年大賑わいだ。  今年一年の幸せを求めて、呪まじない師の店にも多くの客が訪れる。呪い師がその年初めて書く護符は、特に効果があるとされるのだ。  ゆえに人気の呪い師の店先には、書き初めの護符をもらおうと前の晩から...
小説

森のほとりの怒れる人

〈マの森〉に一人で入るな、と大人達が口を酸っぱくして言っているのに、ポラはいつもお構いなしだ。今日は朝から姿を見かけないなと気付いた頃に、全身草まみれで現れる。 「キュラ、お土産だよ」  満面の笑みで、小さく綺麗な花束や、珍しい木の実を差...
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救世主の真実

 大きな酒瓶やいくつもの小瓶が乱雑に転がり、薄暗い室内には妙に甘ったるい匂いが立ちこめていた。 「これが、お前の救世主の本当の姿さ」  目は虚ろで呂律は回らず、だらしなく涎を流している。 「私に力などない。元よりなかったんだ……」  祭り...
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宝島

 人々の望むものがそこにはあるという。どんな宝でも願いでも、欲しいものは必ずある。  数多の人々がそこを目指して旅立ち、誰一人、帰らなかった。  それでも、なんとしても手に入れたいものがあれば、目指してしまうのだ。  うねる波を乗り越え、...
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封印ロンリネス

「ぼくを一人にしないで」  その願い虚しく、十年前、唯一の幼なじみは眠りについた。  小さな宮殿の奥には石造りの寝台と、その向こうに祭壇がある。手前の寝台で横たわる人物はさながら捧げられた生贄だ。  祭壇の中には〈災いの元〉がいるという...
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