旅する目的は人それぞれ。商売だったり、護衛だったり、逃亡だったり、魔物退治だったり。
単なる雑貨屋の主に旅人たる彼らは、いざという時はよろしく、と雑貨を買うついでに頼んで、行く。
客足が途絶えた昼下がり、店内で小さな足音がした。重く疲れた足取りが視界に入る。
この靴の主は確か、辺境を荒らす魔物を倒すと意気込んでいた若者だったか。
顔を上げても彼の姿はない。膝から下の、靴を履いた足があるだけ。靴は泥と血にまみれ、傷だらけだった。
もしも『帰って』きた時は、故郷に『送って』ほしい。
そんな頼み事は、三軒隣の魔術師にすべきだ。嫌みを言われる自分の立場を考えてほしい。
そう愚痴りながらも、足は三軒隣に向かっていた。
※300字
※毎月300字小説企画参加作品、第4回お題「靴」
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