現代ファンタジー

小説

お迎えさん/後編

 有音が『お迎えさん』に選ばれたことは集落全体が知りながら、お祭りではないので、これといった盛り上がりはなかった。みなが有音に「よかったね」と嬉しそうに声をかけ、有音も「ありがとう」とやはり同じように返す光景を何度か目にしたくらいだ。有音...
小説

お迎えさん/前編

 屋根の半分以上は苔むし、部外者が見れば朽ちていると思うかもしれない。だが、部外者がこんな小さな社を訪れることは、まずないだろう。普段ですら、簡単な掃除をしに来る彼以外、滅多に人が来ない。  それでもこの小さな小さな社は、集落にとって大切...
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神さまごっこ

『世界創造プログラム』なるサービスをご存じだろうか。電脳空間に自分だけの世界を創造できるのだ。魔法があったり人間ではない種族を繁栄させたり、自由自在だ。  ドラゴンが舞い魔法もある。ならば魔王もいてほしい。魔王だから手下はたくさん。  基...
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日のあたる場所

 影はいつも傍にあった。壁にもたれた背と、机に叩き付けた拳と、大地を踏む足と……影は必ず私と繋がっていた。  夕暮れのグラウンドでボールが私に向かって飛んできた時、私を守ってくれたのは影だった。階段で足を踏み外した時も、信号のない横断歩道...
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川の主

 夏休みは山奥 に住む祖父母に預けられ、飼い犬を連れてよく川へ散歩に行っていた。 ある時、川の冷たい水を楽しんでいた犬が急に何かを追いかけ始めたので見てみると、一匹の黒い鯉が泳いでいた。頭に白く大きな斑点がある。犬を窘めると、鯉は川の深い...
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