現代ファンタジー

小説

軒下で芽生え、落ちる

天気予報が外れたので、恋をした。  明日は一日中雨、時々止みますが、日射しは届かないでしょう。  キャスターの声を背中で聞きながら、明日天気になあれ、と軒先にぶら下げられたわたし。  わたしを見上げる顔は、期待よりも不安の方が大きい。無理も...
小説

お迎えさん/後編

有音が『お迎えさん』に選ばれたことは集落全体が知りながら、お祭りではないので、これといった盛り上がりはなかった。みなが有音に「よかったね」と嬉しそうに声をかけ、有音も「ありがとう」とやはり同じように返す光景を何度か目にしたくらいだ。有音と紗...
小説

お迎えさん/前編

屋根の半分以上は苔むし、部外者が見れば朽ちていると思うかもしれない。だが、部外者がこんな小さな社を訪れることは、まずないだろう。普段ですら、簡単な掃除をしに来る彼以外、滅多に人が来ない。  それでもこの小さな小さな社は、集落にとって大切なも...
300字SS

神さまごっこ

『世界創造プログラム』なるサービスをご存じだろうか。電脳空間に自分だけの世界を創造できるのだ。魔法があったり人間ではない種族を繁栄させたり、自由自在だ。  ドラゴンが舞い魔法もある。ならば魔王もいてほしい。魔王だから手下はたくさん。  基本...
300字SS

日のあたる場所

影はいつも傍にあった。壁にもたれた背と、机に叩き付けた拳と、大地を踏む足と……影は必ず私と繋がっていた。  夕暮れのグラウンドでボールが私に向かって飛んできた時、私を守ってくれたのは影だった。階段で足を踏み外した時も、信号のない横断歩道を渡...