ライト

短編

灯火の行く末

それは、生きる灯火だった。  ありきたりで片付けられるのは不本意ではあるが、私からすれば、道行く人もありきたりの普通の人生を送っているのだろう。  そんなありきたりな、暗闇を這うような人生を歩んできた私にとって、その人はまさに灯火だった。 ...
小説

続・ぼくのサンタクロース

その小さな島は、海岸の目と鼻の先にあった。島に渡るには舟を使うか、潮が引いたときにだけ現れる道を通るしかない。ただし、島自体が神域であるため、上陸できるのは許された者だけだ。  ただ、見咎める者のいない夜にこっそりと島に渡り、置きみやげをし...
小説

ぼくのサンタクロース

冬になると雪に閉ざされる北の国々と違い、南方の面影が濃いこの地方では、冬であっても氷が張ることさえ稀だ。吐く息が白くけぶるのは朝も早いうちだけのこと。日が、その姿をすべて現せば、たちまち白い息は光の中に溶かされ見えなくなる。師走となり、風が...
小説

挑戦状の理由 最終話02

振り下ろされた剣を受け止める。予想していた通り、その衝撃は軽いものだった。  エナマーリエの体格、腕力、彼女の剣そのものの重さを足し合わせれば、まあこれくらいが妥当なところだろう、とガランは冷静に分析しながら、エナマーリエの剣を弾き返した。...
小説

挑戦状の理由 最終話01

「それで、キルテアさんに相談したんです。そしたら、ガランさんのことが気になっているから、そんな気持ちになるんだと云われて」  自分のことだというのに、エナマーリエはまるで他人事のようである。 「ようやく、わたしはガランさんのことが好きかもし...