それは、生きる灯火だった。
ありきたりで片付けられるのは不本意ではあるが、私からすれば、道行く人もありきたりの普通の人生を送っているのだろう。
そんなありきたりな、暗闇を這うような人生を歩んできた私にとって、その人はまさに灯火だった。
力強く手を引かれたわけではない。
背中を押されたわけでもない。
少し前にいて、こちらが追いつくのを待つように、いつも佇んでいた。
一日中、日が射さないような路地で生まれ、まともな食べ物を知らずにいた時の、些細な偶然からの出会い。そこから生まれた、劇的ではないが確かな変化。目の前に広がる世界は広がり、明るくなったように思えた。
その灯火はもうない。けれど、心の中で、今も燦然と輝いている。
あの人がやり残したことをやり遂げる。私が今や、生きる灯火となっているのだから。
書き出し:それは、生きる灯火だった。
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