ヒトは、どこまでをヒトと認めるのか。
肉体の衰えた部位を、機械体に置き換える人々がいる。中には脳以外の部分を、極端な場合は、脳でさえ。
悉く機械に置き換えたヒトは、果たしてアンドロイドとどれほど違うのか。火星にいくつもの都市を建設している現在でも、世界はまだ答えを出していない。
だから、今のうちなのだ。
「機械への記憶のダウンロードは一割の確率で失敗する。そうでなくとも完璧なダウンロードは期待するなってドクターは……それでも?」
質問に対する二回の瞬きは、肯定を意味する。
彼女は、私の意志が変わらないと知り、嘆息した。
これ以上はもう待てない。完全機械体化が禁止される前に、私は自由に動ける体がほしかった。
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※毎月300字小説企画参加作品、第5回お題「待つ」
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