nagasaka_danpi

小説

春に溶ける

 今でも悔いていることがある。懐に忍ばせている小さな小さな角笛を手にする度、後悔が生まれ、心の中に降り積もる。溶けて消えはしない。  謝りたくとも謝れない、返したくとも返せない。角笛の持ち主は、一つの地に長く留まることはない人だから。 ...
300字SS

もし目が覚めたら、夢の話をしよう

「私達はもう長くないけど、あなたは違う。あなたは私達では辿り着けない、遠い遠い未来へ行ける。だから、そこで伝えて。あなたを目覚めさせた存在に、私達のことを。この世界で起きたことを。私達が夢見た未来を」  それが、この目で見た最後の光景でし...
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最強の魔法使いの服

 魔法使いが魔法を使うには、魔法が織り込まれた服が必要だ。使う魔法によって服は変わる。  だから師匠は、真夏でもたくさん重ね着をしている。快適に過ごせる魔法のかかった服も着ているから、暑くはないらしい。 「だが、重ね着すればいいものでもな...
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貝に託す

 あなたと同じ道を歩むことを選べなかった私の代わりに、この二枚貝の片割れを連れて行って下さい。  その片割れを、私も肌身離さず大事にします。  貝を耳に当てて、あなたの声を思い出します。あなたもきっとそうして下さい。  心はいつもあなたの...
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失われた火/日を求めて

 黒くつるりとした水面に小さな波紋が生まれ、その中心から青く淡い光がゆっくりと現れる。光と波紋は見る間に数え切れないほど増え、湖が青く輝く。 「綺麗……」 「これが〈トゥレアの火〉だよ、ミラウ」  夕方になると餌を求めて飛び立つ小さな竜虫...
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