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掌は塵と消えて

掌は塵と消えて〈6〉

一弥は、義鷹のようになりたいと思っていたし、彼を目標として修行を続けてきた。  それは、自分の暗い願いが物の怪を引き寄せ、人を殺してしまった、その罪を少しでもあがなうためでもあり、人にあだなす物の怪を世に蔓延らせないためでもあった。  一人...
掌は塵と消えて

掌は塵と消えて〈5〉

義鷹は、物の怪退治屋としては師匠であったが、それ以外の日常の面では、年の離れた兄のようだった。一弥に読み書きや算術の基本を教え、町での暮らし方、野宿の仕方等々、様々な知識や知恵を惜しみなく与えてくれた。 「一弥。おまえもそろそろ刀を持って構...
掌は塵と消えて

掌は塵と消えて〈4〉

物の怪は闇に潜み、闇に紛れ、闇から現れる。身分や老若男女など構わず、人を襲う。 「奴らがいつどこに現れるのか、今もよく分かっていない。ただ、一度現れると、周辺に出没するようになる。一弥の村を襲う前にも、その近くの山道で襲われた旅人がいる」 ...
掌は塵と消えて

掌は塵と消えて〈3〉

だが、想像した痛みはなく、代わりに奇妙で短い悲鳴が目の前から聞こえた。  恐る恐る目を開けると、瞑る前よりも近いところにムカデの口があった。そしてその中を貫くように、緑色に光る細い柱――いや、刀があった。 「おい、大丈夫か?」  顔を上げる...
掌は塵と消えて

掌は塵と消えて〈2〉

今から十五年前。  手柄をたてて褒美をたくさんもらってくるぞ、と意気込んで戦に向かった父親は帰ってこなかった。それから女手一つで子供達を育ていた母親は、ある朝冷たくなっていた。  一弥たち残された子供は、ばらばらに親戚に引き取られた。  他...