鎌は水に飢え

 暑いはずなのに、空を見上げると寒々しい気持ちになった。暑いせいなのか冷や汗なのか分からない額の汗を拭う。
 急がなければ。

 今年は極端に雨が少ない。去年まで豊作続きで蓄えはまだあるが、みな既に焦っている。祈り人である姉の元を、村長達が頻繁に訪ねている。
 先代の祈り人の末路を、彼は覚えていた。
 あの年も暑く、乾いていた。水神様が棲むという淵も、すっかり小さくなっていた。田畑を潤す水量にはほど遠い。だが、生け贄を捧げるには十分すぎた。

 祈りを必ず聞いてくれるわけではない水神様は、龍だという。彼が手にする鎌でどうにかできるかは分からない。
 だが、気まぐれな神などいらない。
 祈りが届くよりも速く、神を、この手で――。

※300字
※Twitter300字SS参加作品、第83回お題「祈る」

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