13.あの病院

 なんとなく避ける道、というものがある。その道を通れば職場と自宅を結ぶ最短距離となるが、避けて通ってもさほどの遠回りにはならない。なので、よほど急いでいなければ、その道は選ばなかった。
 車が行き交い、歩道の幅も十分にある、三区の中でも大きな通りの一つだ。通り沿いには商業施設や空調局などの行政機関の他に、病院がある。
 三区でも有数の病院であるそこは、空調局職員もよく世話になっている。最初に運び込まれたときのことは覚えていないが、その後何度か、足を運ぶことになった。
 空調局の職員――整備士があの病院にかかるのは、たいがい地上で何かが起きたときだ。
 喉がすっかり治った今でも、あの病院の前を通るのを自然と避けてしまう。前を通ると悲しい最期を思い出してしまう。
 気にしなくなるには、まだ時間がかかる。

〈了〉

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