300字SS カササギの橋渡し 見上げると数え切れない無数の星。明るさ様々に夜空を彩り、寄り集まってさながら川のようだ。なんと美しく流れる壮大な川だろう、と溜息がこぼれる。 「明日も晴れそうでございますね、姫様」 侍女の言葉に、露台で空を見上げていた姫は嬉しそうに笑... 2020.07.04 300字SS小説
300字SS 鍵なる娘は森の奥に 森の奥深くに聳える巨木のうろには、娘が埋まっている。その娘が世界を辛うじて守っているのだ。 世界は緑に覆われていた。一晩目を離せば畑が緑に奪われるほどに。 だから、森のほとりに住む若者は成人の儀礼として、うろに眠る娘の目覚めを促すのだ... 2020.06.06 300字SS小説
小説 聖女の真実 騎士の約束 後編 「お願い、イグネス。助けて」 彼女は泣いてすがったが、イグネスにはどうすることもできなかった。 この村で生まれた魔術師たちは、幼い頃から自分たちの役割を言い聞かされて育つ。だから、自分にその役割が回ってきたとしても最後には仕方ないと諦... 2020.05.31 小説短編
小説 聖女の真実 騎士の約束 前編 骨が軋み、皮膚がひきつる。針で刺されるような痛みが全身を苛む。血管が蛇のようにのたうち、その中を嵐のように血が巡る。嵐に耐えきれず、何カ所も内側から破れていた。 飛んできた石の礫が顔に当たった。 嵐は彼の内側だけにあるのではない。周... 2020.05.31 小説短編
300字SS インク職人は忙しい インク職人の朝は早く、夜は遅い。 客である魔法使いたちの要求は様々なのだ。朝露を集め、新月の夜に採るべしとされる薬草を探さねばならない。 昼は調合と接客、材料集めも欠かせない。 インク職人は忙しい。 魔法使い達は魔術書に呪符に、... 2020.05.02 300字SS小説