「ぼくを一人にしないで」
その願い虚しく、十年前、唯一の幼なじみは眠りについた。
小さな宮殿の奥には石造りの寝台と、その向こうに祭壇がある。手前の寝台で横たわる人物はさながら捧げられた生贄だ。
祭壇の中には〈災いの元〉がいるという。それを封印するため代替わりの時まで眠り続けるのだから、実際、生贄だ。
代替わりは百年に一度。封印者はそれまで変わらぬ姿で眠り続ける。
「アミシャ、今日もよく眠っているな」
返事はない。彼女は十年前と同じ姿でここにいるが、あの笑顔はもう見られない。彼女が目覚める時、自分はきっといない。
「アミシャ」
今朝も返事を期待せず声をかける。
「……リアノス?」
その日、開かないはずの目が開いた。
※300字
※Twitter300字SS参加作品、第79回お題「残る」
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