小説 空が晴れである限り 気持ちよく晴れた空の下に、それにふさわしくない音が響いていた。 死の宣告のように重苦しい音。それに比べるとかわいそうなほど小さく、必死な足音。 一人の少女が、岩と泥でできた人型の化け物に追われていた。化け物の大きさは、少女の優に三倍はあ... 2024.06.23 小説短編
300字SS 瓶詰めの夜空 幼い頃、意気揚々と遊びに行って、泣いて帰ってくることが時々あった。 「お空を見てごらん」 いつまでも泣いている私に師匠が優しくささやく。満天の星が涙の向こうで輝いていた。 「これを持って。さあ、呪(まじな)いの時間だ」 幼い両手で持たさ... 2023.04.15 300字SS小説
短編 灯火の行く末 それは、生きる灯火だった。 ありきたりで片付けられるのは不本意ではあるが、私からすれば、道行く人もありきたりの普通の人生を送っているのだろう。 そんなありきたりな、暗闇を這うような人生を歩んできた私にとって、その人はまさに灯火だった。 ... 2023.02.12 短編
300字SS 書き初め 年が改まって最初の市は、毎年大賑わいだ。 今年一年の幸せを求めて、呪まじない師の店にも多くの客が訪れる。呪い師がその年初めて書く護符は、特に効果があるとされるのだ。 ゆえに人気の呪い師の店先には、書き初めの護符をもらおうと前の晩から待ち... 2023.01.21 300字SS小説
小説 続・ぼくのサンタクロース その小さな島は、海岸の目と鼻の先にあった。島に渡るには舟を使うか、潮が引いたときにだけ現れる道を通るしかない。ただし、島自体が神域であるため、上陸できるのは許された者だけだ。 ただ、見咎める者のいない夜にこっそりと島に渡り、置きみやげをし... 2022.12.24 小説短編