300字SS 見えざる手 朝日が眩しい海岸を歩いていた時に、出会った。足がなくなった大きなクラゲが打ち上げられていると思ったが、違った。 迷子の宇宙人だった。 故郷へ帰るロケット作りを手伝う羽目になったのだが、色々な研究機関やマスコミ、動画配信者等に追いかけ回さ... 2022.06.05 300字SS小説
300字SS まがいの花 師匠は魔法で生きものを本物そっくりに具現化できる。滅びた動植物や空想の生きるものまで、何でも。 師匠が手漉きした紙に師匠が調合したインクで、複雑な呪文と図形を繋げていく。 この日生み出したのは、遠い東国で春に咲くという花だった。木に咲くの... 2022.06.05 300字SS小説
300字SS 育ったものの名は「 」 私をのぞき込んだ時、彼は目映い太陽を背に負っていて、その表情はよく分からなかった。分かったとしても、何も感じなかっただろう。その時の私は、捨てられたボロボロの人形だったから。 そんな私に、彼は一つずつ、感情を与えてくれた。 誰かを助けよ... 2022.06.05 300字SS小説
300字SS 出世街道まっしぐら 部屋の片隅には赤ん坊くらいの大きさの人形がある。薄汚れて右目はなく、脇から綿が出ている。ごみ捨て場で拾ってきた人形だ。 「手伝うんじゃなかった」 「あんなに親切にしたのに」 「皆のためになるからやったんだ」 地方出で家柄もない平民が出世す... 2022.06.05 300字SS小説
300字SS 鎌は水に飢え 暑いはずなのに、空を見上げると寒々しい気持ちになった。暑いせいなのか冷や汗なのか分からない額の汗を拭う。 急がなければ。 今年は極端に雨が少ない。去年まで豊作続きで蓄えはまだあるが、みな既に焦っている。祈り人である姉の元を、村長達が頻繁... 2022.06.05 300字SS小説