短編

小説

聖女の真実 騎士の約束 前編

骨が軋み、皮膚がひきつる。針で刺されるような痛みが全身を苛む。血管が蛇のようにのたうち、その中を嵐のように血が巡る。嵐に耐えきれず、何カ所も内側から破れていた。  飛んできた石の礫が顔に当たった。  嵐は彼の内側だけにあるのではない。周囲も...
小説

きみの健やかなる未来を願い、描く

定規で引いたようにまっすぐな道にはゴミ一つ落ちていない。ゴミが落ちていても、すぐさま清掃ロボットが現れてゴミを片付け、捨てた人物を特定して当局に通報する。  街路樹の葉っぱすらほとんど落ちていない。きれいに整備された公園には指定された植物だ...
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透明な恋のはじめかた 後編

「もう二週間経つのに、全然戻る気配がないね」  帰り道、明が半分諦め、半分苦笑いする声で言った。彼女も帰宅部だった。放課後も教室でだべることの多い大倉と根本を置いて、透は明と一緒に先に帰ることが増えた。 「透明なのにも慣れちゃったな」 「う...
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透明な恋のはじめかた 前編

帰宅部で、委員会の活動も今日はない透(とおる)は、友人たちと帰途に着いた。駅に向かう道には同じ制服を着た生徒たちの姿が目に付く。 「あれ、山崎じゃねえ?」  大倉が数十メートル先を歩いている男子生徒を指さした。山崎は一緒に帰っていたメンツの...
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ハネムーン・サラダ

西暦二〇××年、日本時間九月九日、午後八時三七分。  終業時間から二時間以上経過した室内に人の姿はなく、私がいる一画以外、照明も落とされている。機械の駆動音が低く静かに響いているのみだ。