短編

小説

きみの健やかなる未来を願い、描く

 定規で引いたようにまっすぐな道にはゴミ一つ落ちていない。ゴミが落ちていても、すぐさま清掃ロボットが現れてゴミを片付け、捨てた人物を特定して当局に通報する。  街路樹の葉っぱすらほとんど落ちていない。きれいに整備された公園には指定された植...
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透明な恋のはじめかた 後編

「もう二週間経つのに、全然戻る気配がないね」  帰り道、明が半分諦め、半分苦笑いする声で言った。彼女も帰宅部だった。放課後も教室でだべることの多い大倉と根本を置いて、透は明と一緒に先に帰ることが増えた。 「透明なのにも慣れちゃったな」 「...
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透明な恋のはじめかた 前編

 帰宅部で、委員会の活動も今日はない透(とおる)は、友人たちと帰途に着いた。駅に向かう道には同じ制服を着た生徒たちの姿が目に付く。 「あれ、山崎じゃねえ?」  大倉が数十メートル先を歩いている男子生徒を指さした。山崎は一緒に帰っていたメン...
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ハネムーン・サラダ

 西暦二〇××年、日本時間九月九日、午後八時三七分。  終業時間から二時間以上経過した室内に人の姿はなく、私がいる一画以外、照明も落とされている。機械の駆動音が低く静かに響いているのみだ。
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夜間飛行

 地面があっという間に遠ざかる。耳元で風がうなり、前髪が吹き飛ばされそうだ。 「もっとゆっくりの方がいいよ、ニア! 速すぎる!」  ニアレアの腰にしがみついている黒猫が、悲鳴のような声を上げる。 「無理言わないで、ヘッダ! 初めて飛んだの...
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