小説 ハネムーン・サラダ 西暦二〇××年、日本時間九月九日、午後八時三七分。 終業時間から二時間以上経過した室内に人の姿はなく、私がいる一画以外、照明も落とされている。機械の駆動音が低く静かに響いているのみだ。 2019.12.07 小説短編
小説 夜間飛行 地面があっという間に遠ざかる。耳元で風がうなり、前髪が吹き飛ばされそうだ。 「もっとゆっくりの方がいいよ、ニア! 速すぎる!」 ニアレアの腰にしがみついている黒猫が、悲鳴のような声を上げる。 「無理言わないで、ヘッダ! 初めて飛んだの... 2019.11.25 小説短編
小説 天体観測 「折り入って頼みがあるんだ」 それまであぐらをかいて談笑していた武利(たけとし)が、急に正座をして、前髪がローテーブルに置かれたコップの縁にあたりそうなほど頭を下げた。 2019.06.08 小説天体観測
小説 いつかまた君と、ここで 見上げれば青い空。視線を下げると水平線が横に長く伸びている。海は空よりも青い。 さらに視線を下げると、海岸線が見えた。白い砂浜ではなく、洗濯板のような岩が広がっている。 「『鬼の洗濯板』と呼ばれてたらしいよ」 2019.06.08 小説天体観測
小説 糸島くんと山田くんとにぎやかな仲間たち 壁は淡い緑色で、床は濃い緑。天井は壁と同じ色で、無機質な白いライトが等間隔に緑の廊下を照らしている。廊下の行き止まりは扉になっていて、「関係者以外使用禁止」と赤い文字で書かれている。緑の背景に赤い文字は、目に痛い。この扉を見るたびにいつ... 2019.06.08 小説天体観測