300字SS もし目が覚めたら、夢の話をしよう 「私達はもう長くないけど、あなたは違う。あなたは私達では辿り着けない、遠い遠い未来へ行ける。だから、そこで伝えて。あなたを目覚めさせた存在に、私達のことを。この世界で起きたことを。私達が夢見た未来を」 それが、この目で見た最後の光景でした... 2020.12.05 300字SS小説
300字SS 最強の魔法使いの服 魔法使いが魔法を使うには、魔法が織り込まれた服が必要だ。使う魔法によって服は変わる。 だから師匠は、真夏でもたくさん重ね着をしている。快適に過ごせる魔法のかかった服も着ているから、暑くはないらしい。 「だが、重ね着すればいいものでもない。... 2020.11.07 300字SS小説
300字SS 貝に託す あなたと同じ道を歩むことを選べなかった私の代わりに、この二枚貝の片割れを連れて行って下さい。 その片割れを、私も肌身離さず大事にします。 貝を耳に当てて、あなたの声を思い出します。あなたもきっとそうして下さい。 心はいつもあなたのそば... 2020.10.05 300字SS小説
300字SS 失われた火/日を求めて 黒くつるりとした水面に小さな波紋が生まれ、その中心から青く淡い光がゆっくりと現れる。光と波紋は見る間に数え切れないほど増え、湖が青く輝く。 「綺麗……」 「これが〈トゥレアの火〉だよ、ミラウ」 夕方になると餌を求めて飛び立つ小さな竜虫の群... 2020.09.05 300字SS小説
300字SS 川の主 夏休みは山奥 に住む祖父母に預けられ、飼い犬を連れてよく川へ散歩に行っていた。 ある時、川の冷たい水を楽しんでいた犬が急に何かを追いかけ始めたので見てみると、一匹の黒い鯉が泳いでいた。頭に白く大きな斑点がある。犬を窘めると、鯉は川の深い方へ... 2020.08.01 300字SS小説