失われた火/日を求めて

 黒くつるりとした水面に小さな波紋が生まれ、その中心から青く淡い光がゆっくりと現れる。光と波紋は見る間に数え切れないほど増え、湖が青く輝く。
「綺麗……」
「これが〈トゥレアの火〉だよ、ミラウ」
 夕方になると餌を求めて飛び立つ小さな竜虫の群。その幻想的な光景と、うっとりとするミラウの横顔。
 もう失われてしまったけれど、決して忘れはしない。
 取り戻すのだ。必ず。

「絶滅した竜虫を? それとも幼馴染みを?」
 いけ好かない相棒が、小馬鹿にした声で言う。
「そのための狩りだ」
「物騒なもの向けるなよ、相棒」
 おどけた声と顔を今すぐ潰したい。だが、こいつの助けが必要なのだ。
「取り戻すための、俺だろう?」
 本当に、いけ好かない。


※299字
※Twitter300字SS参加作品、第68回お題「夕」

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