300字SS 火星ライブラリー 彼女の背丈よりうんと高い本棚の下の方はぎっしりでも、上になるほど少なくなる。 「火星に図書館を作りたかったんだ」 彼女が館長と呼んでいるその人は、火星入植団の第一世代。昔は館長が高いところの本を取ってくれたが、今では彼女が館長に代わって取... 2020.04.04 300字SS小説
小説 きみの健やかなる未来を願い、描く 定規で引いたようにまっすぐな道にはゴミ一つ落ちていない。ゴミが落ちていても、すぐさま清掃ロボットが現れてゴミを片付け、捨てた人物を特定して当局に通報する。 街路樹の葉っぱすらほとんど落ちていない。きれいに整備された公園には指定された植物だ... 2020.04.04 小説短編
300字SS 余り物の魔法遣い 魔法遣いは世界の様々な事象に干渉するために呪文を唱え、文字や文様として刻む。 完璧に唱えられた呪文、正しく綴られた文字、美しく施された文様――だが、魔法遣いも所詮人間だ。一分の隙もない完璧や正しさは存在しない。不完全な魔法からは、完全にな... 2020.03.07 300字SS小説
小説 透明な恋のはじめかた 後編 「もう二週間経つのに、全然戻る気配がないね」 帰り道、明が半分諦め、半分苦笑いする声で言った。彼女も帰宅部だった。放課後も教室でだべることの多い大倉と根本を置いて、透は明と一緒に先に帰ることが増えた。 「透明なのにも慣れちゃったな」 「う... 2020.02.29 小説短編
小説 透明な恋のはじめかた 前編 帰宅部で、委員会の活動も今日はない透(とおる)は、友人たちと帰途に着いた。駅に向かう道には同じ制服を着た生徒たちの姿が目に付く。 「あれ、山崎じゃねえ?」 大倉が数十メートル先を歩いている男子生徒を指さした。山崎は一緒に帰っていたメンツの... 2020.02.29 小説短編