SF

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14.ポケット

いびつな丸で切り取られた空は真っ黒だった。灰色ですらないので、つまり夜ということだ。 どうやら穴の中にいるらしく、その縁は簡単には届きそうにない上方にあった。穴の内側は古びたコンクリートで、所々はげ落ちて土が露出している。 星も月も望めない...
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13.あの病院

なんとなく避ける道、というものがある。その道を通れば職場と自宅を結ぶ最短距離となるが、避けて通ってもさほどの遠回りにはならない。なので、よほど急いでいなければ、その道は選ばなかった。 車が行き交い、歩道の幅も十分にある、三区の中でも大きな通...
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12.並行

先に月に、後に火星に。人類は地球外の地に都市を造り、一般人までもが宇宙へ進出した。 地球外都市として歴史が長いのは月面だが、技術的にも意識的にも先を行くのは火星だ。 火星を拠点として、火星生まれの、火星人とも言える人類は、地球より更に遠い星...
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11.時雨

気象班の予報では、今日は時々雨。雨量はさほどでもないということだが、雨が降ると足下が悪くなるので、こんな日に地上に出るのは憂鬱だ。管理職となった今、地上に出ることはほとんどなくなったが。「お疲れさま。雨が降ったそうだね」「藤原さん。お疲れさ...
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10.私は信号

なんとかベッドから出ることなくアラームを止めようと手を伸ばすが、届かない。止めるのを諦めようにも、無理矢理叩き起こされた頭に甲高い音はつらい。結果、這うようにベッドを出て、そのまま目覚まし時計をわし掴みする。 ようやく静寂を取り戻したので、...