異世界ファンタジー

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ともしびの道

「君の力を、僕に貸してくれないかい?」 満月を背にしても、その顔ははっきりと見えた。自分自身が、月よりほんの少し明るく光っていたから。 でも、優しげなその表情は、太陽よりもずっとずっと明るく見えたんだ。「今日も見つからなかったねえ。いやはや...
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運命屋

近い将来さえ見通せない、先行き不安なこのご時世、確かなものを求めるのは無理からぬこと。 不確かな人生に、確かなものを。定かではない未来に、定められた運命を。 これは、『運命』を手にできるお薬です。 様々な『運命』を取り揃えておりますよ。品揃...
小説

春に溶ける

今でも悔いていることがある。懐に忍ばせている小さな小さな角笛を手にする度、後悔が生まれ、心の中に降り積もる。溶けて消えはしない。 謝りたくとも謝れない、返したくとも返せない。角笛の持ち主は、一つの地に長く留まることはない人だから。 かつての...
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最強の魔法使いの服

魔法使いが魔法を使うには、魔法が織り込まれた服が必要だ。使う魔法によって服は変わる。 だから師匠は、真夏でもたくさん重ね着をしている。快適に過ごせる魔法のかかった服も着ているから、暑くはないらしい。「だが、重ね着すればいいものでもない。魔法...
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貝に託す

あなたと同じ道を歩むことを選べなかった私の代わりに、この二枚貝の片割れを連れて行って下さい。 その片割れを、私も肌身離さず大事にします。 貝を耳に当てて、あなたの声を思い出します。あなたもきっとそうして下さい。 心はいつもあなたのそばに、あ...