異世界ファンタジー

小説

森のほとりの怒れる人

〈マの森〉に一人で入るな、と大人達が口を酸っぱくして言っているのに、ポラはいつもお構いなしだ。今日は朝から姿を見かけないなと気付いた頃に、全身草まみれで現れる。「キュラ、お土産だよ」 満面の笑みで、小さく綺麗な花束や、珍しい木の実を差し出し...
300字SS

救世主の真実

大きな酒瓶やいくつもの小瓶が乱雑に転がり、薄暗い室内には妙に甘ったるい匂いが立ちこめていた。「これが、お前の救世主の本当の姿さ」 目は虚ろで呂律は回らず、だらしなく涎を流している。「私に力などない。元よりなかったんだ……」 祭り上げられ期待...
300字SS

宝島

人々の望むものがそこにはあるという。どんな宝でも願いでも、欲しいものは必ずある。 数多の人々がそこを目指して旅立ち、誰一人、帰らなかった。 それでも、なんとしても手に入れたいものがあれば、目指してしまうのだ。 うねる波を乗り越え、竜が支配す...
300字SS

封印ロンリネス

「ぼくを一人にしないで」 その願い虚しく、十年前、唯一の幼なじみは眠りについた。 小さな宮殿の奥には石造りの寝台と、その向こうに祭壇がある。手前の寝台で横たわる人物はさながら捧げられた生贄だ。 祭壇の中には〈災いの元〉がいるという。それを封...
300字SS

航海士たち

陸地は水平線のかなたに消え、船は海流を横切っている真っ最中。空は快晴、なのに気分は最悪だ。「また船酔い?」 甲板でぐったりしていると、雲はないのに影がさす。呆れ顔に見下ろされていた。「エク……助けてくれ……」「そうやってすぐ人に頼るから、い...