300字SS

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育ったものの名は「 」

私をのぞき込んだ時、彼は目映い太陽を背に負っていて、その表情はよく分からなかった。分かったとしても、何も感じなかっただろう。その時の私は、捨てられたボロボロの人形だったから。 そんな私に、彼は一つずつ、感情を与えてくれた。 誰かを助けようと...
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出世街道まっしぐら

部屋の片隅には赤ん坊くらいの大きさの人形がある。薄汚れて右目はなく、脇から綿が出ている。ごみ捨て場で拾ってきた人形だ。「手伝うんじゃなかった」「あんなに親切にしたのに」「皆のためになるからやったんだ」 地方出で家柄もない平民が出世するには拾...
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鎌は水に飢え

暑いはずなのに、空を見上げると寒々しい気持ちになった。暑いせいなのか冷や汗なのか分からない額の汗を拭う。 急がなければ。 今年は極端に雨が少ない。去年まで豊作続きで蓄えはまだあるが、みな既に焦っている。祈り人である姉の元を、村長達が頻繁に訪...
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神さまごっこ

『世界創造プログラム』なるサービスをご存じだろうか。電脳空間に自分だけの世界を創造できるのだ。魔法があったり人間ではない種族を繁栄させたり、自由自在だ。 ドラゴンが舞い魔法もある。ならば魔王もいてほしい。魔王だから手下はたくさん。 基本設定...
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救世主の真実

大きな酒瓶やいくつもの小瓶が乱雑に転がり、薄暗い室内には妙に甘ったるい匂いが立ちこめていた。「これが、お前の救世主の本当の姿さ」 目は虚ろで呂律は回らず、だらしなく涎を流している。「私に力などない。元よりなかったんだ……」 祭り上げられ期待...