300字SS

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炎の柱

「まさか本当に来るとはね」「今夜だろう、季節送り。見に来てもいいと言ったじゃないか」 魔女は呆れ顔で肩をすくめた。「大人しくしているんだよ。――まったく、物好きな王子様だ」 森の奥、不思議と開けた場所で、魔女が杖を降ると小さな炎が地面に生ま...
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瓶詰めの夜空

幼い頃、意気揚々と遊びに行って、泣いて帰ってくることが時々あった。「お空を見てごらん」 いつまでも泣いている私に師匠が優しくささやく。満天の星が涙の向こうで輝いていた。「これを持って。さあ、呪(まじな)いの時間だ」 幼い両手で持たされた瓶の...
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書き初め

年が改まって最初の市は、毎年大賑わいだ。 今年一年の幸せを求めて、呪まじない師の店にも多くの客が訪れる。呪い師がその年初めて書く護符は、特に効果があるとされるのだ。 ゆえに人気の呪い師の店先には、書き初めの護符をもらおうと前の晩から待ち構え...
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見えざる手

朝日が眩しい海岸を歩いていた時に、出会った。足がなくなった大きなクラゲが打ち上げられていると思ったが、違った。 迷子の宇宙人だった。 故郷へ帰るロケット作りを手伝う羽目になったのだが、色々な研究機関やマスコミ、動画配信者等に追いかけ回されて...
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まがいの花

師匠は魔法で生きものを本物そっくりに具現化できる。滅びた動植物や空想の生きるものまで、何でも。 師匠が手漉きした紙に師匠が調合したインクで、複雑な呪文と図形を繋げていく。この日生み出したのは、遠い東国で春に咲くという花だった。木に咲くので、...