短編

小説

十六年目の「ただいま」

窓から差し込む光は柔らかく、狭い室内にほのかな暖かさを届けている。 昼間とはいえ、今は冬のただ中。暖炉に薪をくべて暖を取っても良いが、若いながらも一人で細々と生活しているラズは、節約できそうなところはなるべく節約している。だから、今日のよう...
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アリューセリドの道守/後編

女神の姿をようやく再び見ることはできたが、その時カイの胸をよぎった嫌な予感はこびりついてなかなか消えることはなかった。それを打ち消そうとするように、カイは今まで以上に念入りに神殿や道の掃除をした。そうすれば、もう一度アリューセリドが現れて、...
短編

アリューセリドの道守/前編

さわさわと、風が草原を渡っていく。 夕刻が近づき少し赤くなった陽光に照らされる草原は、黄金色に見えた。 季節は夏から秋へ移ろい、その秋も、もう間もなく終わる。この国の秋は短い。あと何日もすれば、今年最初の雪が空から舞い落ちてくるだろう。 カ...
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君と会う空の下

「今日未明から降り出した雨は、夜半まで降り続く見込みで――」 画面の向こうにいるお天気キャスターは、いつもながらの美しく楚々としたたたずまいで、憂鬱な今日の天気の行方を説明している。キャスターの爽やかな声は、暗いうちから音をたてて泣き出して...
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冒険好きに贈る三十五の罠

世の中、時には奇妙とも思えるモノが流行ることがある。 まあ、たいては無害であるから、放っておいても問題なんかない。流行るだけ流行り、飽きられたら忘れられていく。そんなモノだ。 しかし、これを放っておいては、世間の迷惑というモノだろう。