小説

300字SS

I’m a human being.

ヒトは、どこまでをヒトと認めるのか。 肉体の衰えた部位を、機械体に置き換える人々がいる。中には脳以外の部分を、極端な場合は、脳でさえ。 悉く機械に置き換えたヒトは、果たしてアンドロイドとどれほど違うのか。火星にいくつもの都市を建設している現...
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帰還

旅する目的は人それぞれ。商売だったり、護衛だったり、逃亡だったり、魔物退治だったり。 単なる雑貨屋の主に旅人たる彼らは、いざという時はよろしく、と雑貨を買うついでに頼んで、行く。 客足が途絶えた昼下がり、店内で小さな足音がした。重く疲れた足...
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炎の柱

「まさか本当に来るとはね」「今夜だろう、季節送り。見に来てもいいと言ったじゃないか」 魔女は呆れ顔で肩をすくめた。「大人しくしているんだよ。――まったく、物好きな王子様だ」 森の奥、不思議と開けた場所で、魔女が杖を降ると小さな炎が地面に生ま...
小説

軒下で芽生え、落ちる

天気予報が外れたので、恋をした。 明日は一日中雨、時々止みますが、日射しは届かないでしょう。 キャスターの声を背中で聞きながら、明日天気になあれ、と軒先にぶら下げられたわたし。 わたしを見上げる顔は、期待よりも不安の方が大きい。無理もない。...
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瓶詰めの夜空

幼い頃、意気揚々と遊びに行って、泣いて帰ってくることが時々あった。「お空を見てごらん」 いつまでも泣いている私に師匠が優しくささやく。満天の星が涙の向こうで輝いていた。「これを持って。さあ、呪(まじな)いの時間だ」 幼い両手で持たされた瓶の...