novelber 07.朗読 ほとんどの子供が、〈青滝〉の外――地上に出るのが初めてだった。 地球は塵に覆われていて、灰色の空が広がっている。それは、小さな子供でもいつの間にか常識として知っている。 だが、知っているだけでは、実感はわかない。 ただでさえ泣きながら... 2020.07.07 novelber小説
novelber 06.当日券 有休を取って気分転換でもしたらどうか、と言われた。疲れているとは思わないし、自分ではいつも通りに、程良い緊張感を持って勤務しているつもりだが、同僚や上司によると、そうでもないらしい。 残業になることはあるが、過密に働いているわけではない。... 2020.07.06 novelber小説
novelber 05.トパーズ 初めて「その人」を見た時、やはり俺は左遷されたのだ、と思った。 だってどう考えたっていかれている。殺戮兵器が闊歩する地上で、どこからどう見ても目立って仕方がない真っ赤な防護服を着ていたのだから。 中層生まれながら苦労して最下層の大学に入... 2020.07.05 novelber小説
novelber 04.恋しい 自分でも部屋をきれいにしている方だと思うが、綺麗好きだからではなく、片付ける手間を少なくしたいからだった。おかげで、急な来客があっても、すぐに部屋に上げられる。 今回もそうだ。まあ、今回の来客は、今のところ眠り続けているが。 自分のベッ... 2020.07.04 novelber小説
novelber 03.焼き芋 「わたしが子供の頃は、冬になると焼き芋屋さんがそこらを走り回ってたもんだよ。うんと昔には、人が運転する車だったらしいけどねえ」 「人が運転する車が走ってたなんて、危なっかしいなあ」 まだうっすらと湯気が立ち上る芋にかじり付く。ほくほくとし... 2020.07.03 novelber小説