novelber 12.並行 先に月に、後に火星に。人類は地球外の地に都市を造り、一般人までもが宇宙へ進出した。 地球外都市として歴史が長いのは月面だが、技術的にも意識的にも先を行くのは火星だ。 火星を拠点として、火星生まれの、火星人とも言える人類は、地球より更に遠... 2020.07.12 novelber小説
novelber 11.時雨 気象班の予報では、今日は時々雨。雨量はさほどでもないということだが、雨が降ると足下が悪くなるので、こんな日に地上に出るのは憂鬱だ。管理職となった今、地上に出ることはほとんどなくなったが。 「お疲れさま。雨が降ったそうだね」 「藤原さん。お疲... 2020.07.11 novelber小説
novelber 10.私は信号 なんとかベッドから出ることなくアラームを止めようと手を伸ばすが、届かない。止めるのを諦めようにも、無理矢理叩き起こされた頭に甲高い音はつらい。結果、這うようにベッドを出て、そのまま目覚まし時計をわし掴みする。 ようやく静寂を取り戻したので... 2020.07.10 novelber小説
novelber 09.ポツンと きっかけははっきりと覚えている。 期末試験初日を乗り切り、翌日に備えるため、友人とのお喋りも寄り道もせず、塾に向かっていたときだった。 学校から塾に直接行くには、五階分の抜きぬけになっている、円形の吹き抜け広場(そのまんまのネーミングだ... 2020.07.09 novelber小説
novelber 08.天狼星 それはもうこっぴどく怒られた。 割と温厚な歳の離れたあの従兄弟が、あんなに怒ったのを見たのは初めてだ。両親にだってあんなに怒られたことはない。 ただ、それだけのことをしてしまったのだと、わかっていた。もちろん、反省もした。死ぬほどした。... 2020.07.08 novelber小説