novelber 17.通信士 あの日、月面都市で暮らす人類は、地球に衝突する小惑星を、塵に覆われて灰色の惑星と変わっていく地球を、ただ見ているしかなかった。 地球に接近する小惑星が発見され、それとの衝突が避けようがないと判明した後、月面都市へ避難しようと人々が殺到した... 2020.07.17 novelber小説
novelber 16.編み込み 朝はいつでも忙しい。朝食を作り娘を起こしてご飯を食べさせ、保育園に行く支度をする――のだが、すんなり行かない日の方が多い。娘がご飯を食べてくれなかったり、着替えてくれなかったり、靴を履いてくれなかったり、髪型を気に入ってくれなかったり、理由... 2020.07.16 novelber小説
novelber 15.七五三 四月には地元を離れ、就職する。今までとはまったく違うであろう新しい生活への期待に、胸が膨らむ。けれど、不安もあった。大学を卒業するまでの二十二年間、地元を離れたことはなかった。一人暮らしも初めてだ。 ずっと実家にいたけど、大学に進学してか... 2020.07.15 novelber小説
novelber 14.ポケット いびつな丸で切り取られた空は真っ黒だった。灰色ですらないので、つまり夜ということだ。 どうやら穴の中にいるらしく、その縁は簡単には届きそうにない上方にあった。穴の内側は古びたコンクリートで、所々はげ落ちて土が露出している。 星も月も望め... 2020.07.14 novelber小説
novelber 13.あの病院 なんとなく避ける道、というものがある。その道を通れば職場と自宅を結ぶ最短距離となるが、避けて通ってもさほどの遠回りにはならない。なので、よほど急いでいなければ、その道は選ばなかった。 車が行き交い、歩道の幅も十分にある、三区の中でも大きな... 2020.07.13 novelber小説