novelber 27.銀の実 「お疲れさまです。お先に失礼します」 個人端末の電源を落として席を立ったところで、二つ隣の席で作業報告書を書いていた蒼平に呼び止められた。 「今度の日曜、非番だよな?」 「はい」 「何か予定はあるか? なければ、うちに来てほしいんだ」 「... 2020.07.27 novelber小説
novelber 26.にじむ 「今日の模試、全然だめ。自信ない」 「あたしもだよ~。あと二ヶ月で入試なのに、やばすぎ」 「とりあえず模試終わったし、気分転換にカフェに寄っていかない?」 「いいねえ。あたし、雪パフェ食べたーい」 「ごめん、わたし、パス。今日は帰らないと」... 2020.07.26 novelber小説
novelber 25.初雪 冬が近くなるにつれ、灰色の空はどんどん低くなる気がする。重苦しくて息苦しくて、その上寒くて、憂鬱な気分になる。 こんな季節を、あの人はどういう気分で乗り越えたのだろう。 堀川は自分の体を見下ろした。真っ赤な防護服には、極薄型のライトが張... 2020.07.25 novelber小説
novelber 24.蝋燭 脱いだ防護服をハンガーに掛け、ロッカーをばたんと閉じると、少しせき込んだ。地上から前室に戻る時、二度、エアシャワーを浴びて表面に付いた塵などを吹き飛ばすので、防護服にもマスクにもほとんど埃は付いていないはずだ。だけど、ロッカーを閉めた勢いで... 2020.07.24 novelber小説
novelber 23.温かい飲み物 個人端末とにらめっこし続けるのに疲れ、堀川は椅子に座ったまま、大きく伸びをした。 メンテナンス作業に比べると、事務仕事はまだ慣れないし、あまりおもしろくない。灰色一色で、危険も跋扈している地上で仕事をする方がおもしろい、というのもおかしな... 2020.07.23 novelber小説