SF

novelber

27.銀の実

「お疲れさまです。お先に失礼します」  個人端末の電源を落として席を立ったところで、二つ隣の席で作業報告書を書いていた蒼平に呼び止められた。 「今度の日曜、非番だよな?」 「はい」 「何か予定はあるか? なければ、うちに来てほしいんだ」 「...
novelber

26.にじむ

「今日の模試、全然だめ。自信ない」 「あたしもだよ~。あと二ヶ月で入試なのに、やばすぎ」 「とりあえず模試終わったし、気分転換にカフェに寄っていかない?」 「いいねえ。あたし、雪パフェ食べたーい」 「ごめん、わたし、パス。今日は帰らないと」...
novelber

25.初雪

冬が近くなるにつれ、灰色の空はどんどん低くなる気がする。重苦しくて息苦しくて、その上寒くて、憂鬱な気分になる。  こんな季節を、あの人はどういう気分で乗り越えたのだろう。  堀川は自分の体を見下ろした。真っ赤な防護服には、極薄型のライトが張...
novelber

24.蝋燭

脱いだ防護服をハンガーに掛け、ロッカーをばたんと閉じると、少しせき込んだ。地上から前室に戻る時、二度、エアシャワーを浴びて表面に付いた塵などを吹き飛ばすので、防護服にもマスクにもほとんど埃は付いていないはずだ。だけど、ロッカーを閉めた勢いで...
novelber

23.温かい飲み物

個人端末とにらめっこし続けるのに疲れ、堀川は椅子に座ったまま、大きく伸びをした。  メンテナンス作業に比べると、事務仕事はまだ慣れないし、あまりおもしろくない。灰色一色で、危険も跋扈している地上で仕事をする方がおもしろい、というのもおかしな...