SF

300字SS

もし目が覚めたら、夢の話をしよう

「私達はもう長くないけど、あなたは違う。あなたは私達では辿り着けない、遠い遠い未来へ行ける。だから、そこで伝えて。あなたを目覚めさせた存在に、私達のことを。この世界で起きたことを。私達が夢見た未来を」  それが、この目で見た最後の光景でした...
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失われた火/日を求めて

黒くつるりとした水面に小さな波紋が生まれ、その中心から青く淡い光がゆっくりと現れる。光と波紋は見る間に数え切れないほど増え、湖が青く輝く。 「綺麗……」 「これが〈トゥレアの火〉だよ、ミラウ」  夕方になると餌を求めて飛び立つ小さな竜虫の群...
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30.真っ白い

事務所という名の狭い室内にあるのは、二台ずつ向かい合わせに並ぶ事務机と、壁際に寄せられた三人掛けの古ぼけたソファ、その前にあるローテーブル、雑多のものが詰まっている背の高いキャビネットくらいだ。  窓もない部屋で、壁の一面はキャビネット、も...
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29.冬の足音

「いやぁ、和樹の家でゆっくりするの、すっごい久しぶりだな」  お茶の入ったマグカップを差し出すと、武利がしみじみと言った。  受験勉強に集中したい言うので、武利とは晩秋から会っていなかった。最後に会ったのは、地上では冬の足音が近付いていた頃...
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28.ペチカ

部屋は閉め切られ、壁を背にして四角いストーブを置いていた。  記録映像や写真、絵画でしか見たことがなく、もちろん使ったこともないけれど、目の前にあるそれは赤々とした光と熱を放射して、その前の床に座る二人を暖めている――ように感じる。 「本当...