異世界ファンタジー

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鍵なる娘は森の奥に

森の奥深くに聳える巨木のうろには、娘が埋まっている。その娘が世界を辛うじて守っているのだ。  世界は緑に覆われていた。一晩目を離せば畑が緑に奪われるほどに。 だから、森のほとりに住む若者は成人の儀礼として、うろに眠る娘の目覚めを促すのだ。彼...
小説

聖女の真実 騎士の約束 後編

「お願い、イグネス。助けて」  彼女は泣いてすがったが、イグネスにはどうすることもできなかった。  この村で生まれた魔術師たちは、幼い頃から自分たちの役割を言い聞かされて育つ。だから、自分にその役割が回ってきたとしても最後には仕方ないと諦め...
小説

聖女の真実 騎士の約束 前編

骨が軋み、皮膚がひきつる。針で刺されるような痛みが全身を苛む。血管が蛇のようにのたうち、その中を嵐のように血が巡る。嵐に耐えきれず、何カ所も内側から破れていた。  飛んできた石の礫が顔に当たった。  嵐は彼の内側だけにあるのではない。周囲も...
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インク職人は忙しい

インク職人の朝は早く、夜は遅い。  客である魔法使いたちの要求は様々なのだ。朝露を集め、新月の夜に採るべしとされる薬草を探さねばならない。  昼は調合と接客、材料集めも欠かせない。  インク職人は忙しい。  魔法使い達は魔術書に呪符に、筆と...
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余り物の魔法遣い

魔法遣いは世界の様々な事象に干渉するために呪文を唱え、文字や文様として刻む。  完璧に唱えられた呪文、正しく綴られた文字、美しく施された文様――だが、魔法遣いも所詮人間だ。一分の隙もない完璧や正しさは存在しない。不完全な魔法からは、完全にな...