地下都市SF

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05.トパーズ

初めて「その人」を見た時、やはり俺は左遷されたのだ、と思った。  だってどう考えたっていかれている。殺戮兵器が闊歩する地上で、どこからどう見ても目立って仕方がない真っ赤な防護服を着ていたのだから。  中層生まれながら苦労して最下層の大学に入...
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04.恋しい

自分でも部屋をきれいにしている方だと思うが、綺麗好きだからではなく、片付ける手間を少なくしたいからだった。おかげで、急な来客があっても、すぐに部屋に上げられる。  今回もそうだ。まあ、今回の来客は、今のところ眠り続けているが。  自分のベッ...
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03.焼き芋

「わたしが子供の頃は、冬になると焼き芋屋さんがそこらを走り回ってたもんだよ。うんと昔には、人が運転する車だったらしいけどねえ」 「人が運転する車が走ってたなんて、危なっかしいなあ」  まだうっすらと湯気が立ち上る芋にかじり付く。ほくほくとし...
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02.手紙

和風の鮮やかな装飾の施された金属製の缶には、元は菓子が入っていた。中身をすべておいしく食べた後、缶を捨てるのがもったいなくて、いつか何かに使えないかと取っておいた。  その「いつか」は、中身の菓子を一緒に食べた一人娘が、半ば家出同然で独り立...
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01.窓辺

その部屋に、窓は一つしかない。ただ、それは大きいので、こぢんまりとした部屋でも十分に開放感がある――はずだ。  窓際の壁に背中を預け、ぼんやりと窓の外に視線を向けている彼の視界の半分ほどは、ベランダだった。そのせいで、窓から見える外の景色は...