地下都市SF

novelber

25.初雪

冬が近くなるにつれ、灰色の空はどんどん低くなる気がする。重苦しくて息苦しくて、その上寒くて、憂鬱な気分になる。  こんな季節を、あの人はどういう気分で乗り越えたのだろう。  堀川は自分の体を見下ろした。真っ赤な防護服には、極薄型のライトが張...
novelber

24.蝋燭

脱いだ防護服をハンガーに掛け、ロッカーをばたんと閉じると、少しせき込んだ。地上から前室に戻る時、二度、エアシャワーを浴びて表面に付いた塵などを吹き飛ばすので、防護服にもマスクにもほとんど埃は付いていないはずだ。だけど、ロッカーを閉めた勢いで...
novelber

23.温かい飲み物

個人端末とにらめっこし続けるのに疲れ、堀川は椅子に座ったまま、大きく伸びをした。  メンテナンス作業に比べると、事務仕事はまだ慣れないし、あまりおもしろくない。灰色一色で、危険も跋扈している地上で仕事をする方がおもしろい、というのもおかしな...
novelber

22.冬将軍

カーテンは閉め切ってあるけど、外はまだ明るいから室内はほんのり薄暗いだけだ。  外は――本当の『外』である地上は、今はもうすっかり寒いらしい。空は灰色でも、昼間は塵越しにわずかに日光が届くので、夜よりも寒さはましなんだとか。灰色の空が厚い布...
novelber

21.ボジョレ・ヌーボー

脚の長いグラスに、深い赤色の、それでいて透明感のある液体が注がれる。並んでいる同じグラスにも、その液体は注がれた。並々ではなく、半分よりも少ない。  赤い液体が入っていた樹脂製ボトルに栓をしてテーブルに置くと、彼は腕時計型の端末を見た。  ...