シリアス

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あるいはそれよりも鮮やかな 後編

丹野の真っ赤な防護服に見慣れ、真新しかった堀川の作業着にも、いつの間にか、こすり洗いしても落ちない汚れが着くようになっていた。丹野の防護服のLEDライトが点灯するとろこはお目にかかったことがなかったが、特に気にしなかった。慣れとは恐ろしい。...
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あるいはそれよりも鮮やかな 前編

灰色の雲が空を覆い尽くし、昼間だというのに太陽がどこにあるのか分からない。もっとも、太陽を直に拝んだことのある人類は、もうこの世のどこにもいない。  灰色の雲と厚い塵の層の向こうにあるおぼろげな姿を見られたら、運がいい。
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賭けと夕陽と女と、そして 03

ルアソルの目を見たウィシュカに「夕陽のようだ」と言われて以来、褒美として女を与えられるというのなら、ウィシュカがいいと言い続けてきた。ヴァラトナに呆れられようとも、自分が何故そこまで執着するのかはっきりとした答えを出せないままでも、ルアソル...
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賭けと夕陽と女と、そして 02

その日聞いた喚声を忘れることはないだろう。  十年の間に負った傷の数と築いた骸の数、どちらが多いのかはもう分からない。  数年ぶりに現れた、無敗の闘士。だが、十年間を勝ち抜いた闘士に降り注ぐのは歓声と、そしてやはり罵声だった。
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賭けと夕陽と女と、そして 01

「あんたの目、夕陽みたい」  ルアソルを見上げる小麦色の肌の女は、そう言った。 「夕陽?」  思わぬ言葉を聞いて、ルアソルはわずかに眉間にしわを寄せる。