私は現代のニッポンを生きる忍者。狙った相手と親密になり、必要な情報を芋蔓式に手に入れる。
世の中は随分と変わった。
カフェや居酒屋で同僚と歓談する風を装っていた仲間や親方との情報交換も、今はリモートで行っている。
画面の向こうの親方は、いつもの険しい表情で私の報告を聞いている。
我々は忍者。例え仲間でも、本当の名も生活も明かさない。親方が猫を飼っていることも知らなかった。
猫は構ってほしいのか画面の前をウロウロしている。猫のためにも、私は報告を切り上げた。
「ピコたん、ゴメンねお待たせ! お仕事終わったよぉ!」
親方、まだマイクもカメラも動いてます。
私はいつものように見なかったふりをして、そっと画面を閉じた。
※300字
※Twitter300字SS参加作品、第73回お題「隠す」
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