300字SS

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神さまごっこ

『世界創造プログラム』なるサービスをご存じだろうか。電脳空間に自分だけの世界を創造できるのだ。魔法があったり人間ではない種族を繁栄させたり、自由自在だ。  ドラゴンが舞い魔法もある。ならば魔王もいてほしい。魔王だから手下はたくさん。  基本...
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救世主の真実

大きな酒瓶やいくつもの小瓶が乱雑に転がり、薄暗い室内には妙に甘ったるい匂いが立ちこめていた。 「これが、お前の救世主の本当の姿さ」  目は虚ろで呂律は回らず、だらしなく涎を流している。 「私に力などない。元よりなかったんだ……」  祭り上げ...
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宝島

人々の望むものがそこにはあるという。どんな宝でも願いでも、欲しいものは必ずある。  数多の人々がそこを目指して旅立ち、誰一人、帰らなかった。  それでも、なんとしても手に入れたいものがあれば、目指してしまうのだ。  うねる波を乗り越え、竜が...
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封印ロンリネス

「ぼくを一人にしないで」  その願い虚しく、十年前、唯一の幼なじみは眠りについた。  小さな宮殿の奥には石造りの寝台と、その向こうに祭壇がある。手前の寝台で横たわる人物はさながら捧げられた生贄だ。  祭壇の中には〈災いの元〉がいるという。そ...
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航海士たち

陸地は水平線のかなたに消え、船は海流を横切っている真っ最中。空は快晴、なのに気分は最悪だ。 「また船酔い?」  甲板でぐったりしていると、雲はないのに影がさす。呆れ顔に見下ろされていた。 「エク……助けてくれ……」 「そうやってすぐ人に頼る...