300字SS

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川の主

 夏休みは山奥 に住む祖父母に預けられ、飼い犬を連れてよく川へ散歩に行っていた。 ある時、川の冷たい水を楽しんでいた犬が急に何かを追いかけ始めたので見てみると、一匹の黒い鯉が泳いでいた。頭に白く大きな斑点がある。犬を窘めると、鯉は川の深い...
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カササギの橋渡し

 見上げると数え切れない無数の星。明るさ様々に夜空を彩り、寄り集まってさながら川のようだ。なんと美しく流れる壮大な川だろう、と溜息がこぼれる。 「明日も晴れそうでございますね、姫様」  侍女の言葉に、露台で空を見上げていた姫は嬉しそうに笑...
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鍵なる娘は森の奥に

 森の奥深くに聳える巨木のうろには、娘が埋まっている。その娘が世界を辛うじて守っているのだ。  世界は緑に覆われていた。一晩目を離せば畑が緑に奪われるほどに。 だから、森のほとりに住む若者は成人の儀礼として、うろに眠る娘の目覚めを促すのだ...
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インク職人は忙しい

 インク職人の朝は早く、夜は遅い。  客である魔法使いたちの要求は様々なのだ。朝露を集め、新月の夜に採るべしとされる薬草を探さねばならない。  昼は調合と接客、材料集めも欠かせない。  インク職人は忙しい。  魔法使い達は魔術書に呪符に、...
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火星ライブラリー

 彼女の背丈よりうんと高い本棚の下の方はぎっしりでも、上になるほど少なくなる。 「火星に図書館を作りたかったんだ」  彼女が館長と呼んでいるその人は、火星入植団の第一世代。昔は館長が高いところの本を取ってくれたが、今では彼女が館長に代わっ...
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