novelber 20.橋の上 人工太陽はすっかり赤くなっていて、天井の端っこにいた。もうすぐ日が沈む。 両親は門限にうるさくない方だが、それは事前に帰宅予定時間を伝えていてのこと。ボウリングで盛り上がり、二ゲームで終えるはずが五ゲームもしてしまったので、今は日没前でも... 2020.07.20 novelber小説
novelber 19.残光 個室のスライド式のドアは全開になっていて、廊下からでも室内が見えるが、ベッドの周囲はカーテンが引かれていた。裾は床に届いていないので、ベッドの脚が見える。人の脚は見えない。見舞い客はなく、看護師の処置中でもないようだ。 入り口で一度声をか... 2020.07.19 novelber小説
novelber 18.毛糸 寒冷化していても、地上には四季があるそうだ。十一月の下旬ともなると、冬が近付き寒さが増してくるという。地下都市では、年間を通して快適な気温になるように調整されているから、寒くなると言われてもぴんとこない。寒いと感じるのは熱が出たとか、体調不... 2020.07.18 novelber小説
novelber 17.通信士 あの日、月面都市で暮らす人類は、地球に衝突する小惑星を、塵に覆われて灰色の惑星と変わっていく地球を、ただ見ているしかなかった。 地球に接近する小惑星が発見され、それとの衝突が避けようがないと判明した後、月面都市へ避難しようと人々が殺到した... 2020.07.17 novelber小説
novelber 16.編み込み 朝はいつでも忙しい。朝食を作り娘を起こしてご飯を食べさせ、保育園に行く支度をする――のだが、すんなり行かない日の方が多い。娘がご飯を食べてくれなかったり、着替えてくれなかったり、靴を履いてくれなかったり、髪型を気に入ってくれなかったり、理由... 2020.07.16 novelber小説