短編

短編

アリューセリドの道守/前編

さわさわと、風が草原を渡っていく。  夕刻が近づき少し赤くなった陽光に照らされる草原は、黄金色に見えた。  季節は夏から秋へ移ろい、その秋も、もう間もなく終わる。この国の秋は短い。あと何日もすれば、今年最初の雪が空から舞い落ちてくるだろう。...
小説

君と会う空の下

「今日未明から降り出した雨は、夜半まで降り続く見込みで――」  画面の向こうにいるお天気キャスターは、いつもながらの美しく楚々としたたたずまいで、憂鬱な今日の天気の行方を説明している。キャスターの爽やかな声は、暗いうちから音をたてて泣き出し...
小説

冒険好きに贈る三十五の罠

世の中、時には奇妙とも思えるモノが流行ることがある。  まあ、たいては無害であるから、放っておいても問題なんかない。流行るだけ流行り、飽きられたら忘れられていく。そんなモノだ。  しかし、これを放っておいては、世間の迷惑というモノだろう。