短編

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賭けと夕陽と女と、そして 03

ルアソルの目を見たウィシュカに「夕陽のようだ」と言われて以来、褒美として女を与えられるというのなら、ウィシュカがいいと言い続けてきた。ヴァラトナに呆れられようとも、自分が何故そこまで執着するのかはっきりとした答えを出せないままでも、ルアソル...
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賭けと夕陽と女と、そして 02

その日聞いた喚声を忘れることはないだろう。  十年の間に負った傷の数と築いた骸の数、どちらが多いのかはもう分からない。  数年ぶりに現れた、無敗の闘士。だが、十年間を勝ち抜いた闘士に降り注ぐのは歓声と、そしてやはり罵声だった。
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賭けと夕陽と女と、そして 01

「あんたの目、夕陽みたい」  ルアソルを見上げる小麦色の肌の女は、そう言った。 「夕陽?」  思わぬ言葉を聞いて、ルアソルはわずかに眉間にしわを寄せる。
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十六年目の「ただいま」

窓から差し込む光は柔らかく、狭い室内にほのかな暖かさを届けている。  昼間とはいえ、今は冬のただ中。暖炉に薪をくべて暖を取っても良いが、若いながらも一人で細々と生活しているラズは、節約できそうなところはなるべく節約している。だから、今日のよ...
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アリューセリドの道守/後編

女神の姿をようやく再び見ることはできたが、その時カイの胸をよぎった嫌な予感はこびりついてなかなか消えることはなかった。それを打ち消そうとするように、カイは今まで以上に念入りに神殿や道の掃除をした。そうすれば、もう一度アリューセリドが現れて、...