小説

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29.冬の足音

「いやぁ、和樹の家でゆっくりするの、すっごい久しぶりだな」  お茶の入ったマグカップを差し出すと、武利がしみじみと言った。  受験勉強に集中したい言うので、武利とは晩秋から会っていなかった。最後に会ったのは、地上では冬の足音が近付いていた...
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28.ペチカ

 部屋は閉め切られ、壁を背にして四角いストーブを置いていた。  記録映像や写真、絵画でしか見たことがなく、もちろん使ったこともないけれど、目の前にあるそれは赤々とした光と熱を放射して、その前の床に座る二人を暖めている――ように感じる。 「...
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27.銀の実

「お疲れさまです。お先に失礼します」  個人端末の電源を落として席を立ったところで、二つ隣の席で作業報告書を書いていた蒼平に呼び止められた。 「今度の日曜、非番だよな?」 「はい」 「何か予定はあるか? なければ、うちに来てほしいんだ」 ...
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26.にじむ

「今日の模試、全然だめ。自信ない」 「あたしもだよ~。あと二ヶ月で入試なのに、やばすぎ」 「とりあえず模試終わったし、気分転換にカフェに寄っていかない?」 「いいねえ。あたし、雪パフェ食べたーい」 「ごめん、わたし、パス。今日は帰らないと...
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25.初雪

 冬が近くなるにつれ、灰色の空はどんどん低くなる気がする。重苦しくて息苦しくて、その上寒くて、憂鬱な気分になる。  こんな季節を、あの人はどういう気分で乗り越えたのだろう。  堀川は自分の体を見下ろした。真っ赤な防護服には、極薄型のライト...
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