300字SS I’m a human being. ヒトは、どこまでをヒトと認めるのか。 肉体の衰えた部位を、機械体に置き換える人々がいる。中には脳以外の部分を、極端な場合は、脳でさえ。 悉く機械に置き換えたヒトは、果たしてアンドロイドとどれほど違うのか。火星にいくつもの都市を建設してい... 2023.05.27 300字SS小説
300字SS 帰還 旅する目的は人それぞれ。商売だったり、護衛だったり、逃亡だったり、魔物退治だったり。 単なる雑貨屋の主に旅人たる彼らは、いざという時はよろしく、と雑貨を買うついでに頼んで、行く。 客足が途絶えた昼下がり、店内で小さな足音がした。重く疲れ... 2023.05.27 300字SS小説
300字SS 炎の柱 「まさか本当に来るとはね」 「今夜だろう、季節送り。見に来てもいいと言ったじゃないか」 魔女は呆れ顔で肩をすくめた。 「大人しくしているんだよ。――まったく、物好きな王子様だ」 森の奥、不思議と開けた場所で、魔女が杖を降ると小さな炎が地... 2023.05.27 300字SS小説
小説 軒下で芽生え、落ちる 天気予報が外れたので、恋をした。 明日は一日中雨、時々止みますが、日射しは届かないでしょう。 キャスターの声を背中で聞きながら、明日天気になあれ、と軒先にぶら下げられたわたし。 わたしを見上げる顔は、期待よりも不安の方が大きい。無理も... 2023.05.27 小説短編
300字SS 瓶詰めの夜空 幼い頃、意気揚々と遊びに行って、泣いて帰ってくることが時々あった。 「お空を見てごらん」 いつまでも泣いている私に師匠が優しくささやく。満天の星が涙の向こうで輝いていた。 「これを持って。さあ、呪(まじな)いの時間だ」 幼い両手で持たさ... 2023.04.15 300字SS小説