300字SS 宝島 人々の望むものがそこにはあるという。どんな宝でも願いでも、欲しいものは必ずある。 数多の人々がそこを目指して旅立ち、誰一人、帰らなかった。 それでも、なんとしても手に入れたいものがあれば、目指してしまうのだ。 うねる波を乗り越え、竜が... 2021.10.03 300字SS小説
300字SS 封印ロンリネス 「ぼくを一人にしないで」 その願い虚しく、十年前、唯一の幼なじみは眠りについた。 小さな宮殿の奥には石造りの寝台と、その向こうに祭壇がある。手前の寝台で横たわる人物はさながら捧げられた生贄だ。 祭壇の中には〈災いの元〉がいるという。そ... 2021.09.05 300字SS小説
300字SS 航海士たち 陸地は水平線のかなたに消え、船は海流を横切っている真っ最中。空は快晴、なのに気分は最悪だ。 「また船酔い?」 甲板でぐったりしていると、雲はないのに影がさす。呆れ顔に見下ろされていた。 「エク……助けてくれ……」 「そうやってすぐ人に頼る... 2021.08.08 300字SS小説
300字SS あかときの8分19秒 昼に白く輝き、夜は月を通して存在を知らしめる、人類最寄りの恒星。 目を細めても眩しすぎるその輝きは、8分19秒前のもの。今見えている太陽は、既に過去なのだ。 見えていても、それだけかの星は遠い。 有志が集まって打ち上げた太陽探査機「あ... 2021.07.04 300字SS小説
300字SS 日のあたる場所 影はいつも傍にあった。壁にもたれた背と、机に叩き付けた拳と、大地を踏む足と……影は必ず私と繋がっていた。 夕暮れのグラウンドでボールが私に向かって飛んできた時、私を守ってくれたのは影だった。階段で足を踏み外した時も、信号のない横断歩道を渡... 2021.06.06 300字SS小説